不動産投資成功への道~目的を明確にする~③事業承継編

なぜ不動産投資を始めるのか。収益を上げたいのか、将来の資産形成を目指しているのか、税金対策での投資なのか等、目的によって投資先や戦略が異なります。

目的により投資する物件が変わりますので明確にする必要があります。
ですので、不動産投資を始めるには、まず目的を明確にすることが大切です。

ここでの目的とは「相続税の軽減のため」、「所得税の軽減のため」、「事業承継の対策として」、「資産の組み換えのため」、「収益を上げる」、「資産形成のため」等があります。

今回は 「事業承継の対策として」についてです。
こちらは「相続税の軽減のため」 に通じるところがあります。

対象となる方は会社経営者がほとんどになると思います。(雇われ社長ではなくオーナー社長)

事業を次の世代に引き継ぐ為の不動産投資になるので、ただ会社経営をしているのではなく自身が法人を所有している方になります。

法人を所有していると様々な問題があります。

特に事業承継は大きな問題です。
不動産投資は意外にも事業承継の対策にもなります。
なぜ、事業承継対策が不動産投資でできるのでしょうか。

それは、非上場会社の株式(取引相場のない株式)にも相続税はかかるからです。

取引相場のない相続税の算出方法はでの多くは類似業種比準方式と純資産価格方式の併用する場合が多く、貸借対照表の純資産価格を株数で割ることで1株当たりの純資産価格を出すなどをして計算されます。

ここで記載すると長くなってしますので割愛します。(詳しく知りたい方はお問い合わせにてコメントを頂けたらと思います。)

基本的には個人の相続税対策と同様になりますが、大きく変わるのは3年後に路線価ベースでの計算に変わります。


不動産の相続税評価額

1)取得後3年以内・・・取引価格(取得時の時価)

2)取得後3年経過

土地等 路線価による評価額 (時価の8割程度)*地域により差が出ます。

建物等 固定資産税評価額 (取得価格の5割程度)


上記のような評価になります。

例として下記の法人を想定します。

土地400㎡ 価格2億円(借地権割合60% 路線価400千円/㎡) 建物4億円の賃貸物件購入の場合

【会社データ】

業種:雑貨卸売業

資本金:1億円

発行株式:2000株

従業員:10人

前年度売上高:3億円

家族構成:妻 子ども2人

保有財産:1,900株(長男が相続予定)

     預貯金1億円 自宅5百万 自宅敷地200㎡ 相続税評価額4,000万(妻が相続予定)

①純資産価額方式による 1株あたり評価額 2億円 ÷2,000 株= 100,00円

②1株あたり相続税評価額(58,000円×0.6 )+① ×(1-0.6 )= 74,800円

③太郎の有する A社株式の相続税評価額

74,800円×1,900株= 1億4,212 万

建物評価額

4億円 ×(1 -0.3 (借家権割合))= 2億8,000 万円

土地評価額

2億円 ×(1 -0.6( 借地権割合 )×0.3( 借家権割合 )) =1億 6,400 万円

評価減の効果 評価減の効果

60,000万円-44,400万円= 15,600万円

1株当たりの純資産額

△12,800万円÷2,000株=△64,400円⇒0円

相続税評価額58,000円×0.6+0円×(1-0.6)=34,800円

34,800円×1,900株=66,120,000円

計算式は上記のようになります。

まとめると

1 不動産投資前

株式相続税評価額 142,120,0000円

課税価格の合計額 255,120,0000円

課税遺産総額   207,120,0000円

相続税の総額    41,492,0000円

2 不動産投資後

株式相続税評価額  82,840,000円

課税価格の合計額 194,840,0000円

課税遺産総額   147,840,0000円

相続税の総額    25,962,0000円

3 不動産投資3年経過後

株式相続税評価額  66,120,000円

課税価格の合計額 179,120,0000円

課税遺産総額   131,120,0000円

相続税の総額    21,782,0000円

と、いった効果があります。

法人で行う不動産投資のメリットは主に次の4個になります。

① 貸家及び、貸家建てつけ地として評価することによる評価減を利用して自社株式の相続税評価額が下がる

② 取得日から3年経過すると路線価や固定資産税評価額を基にした評価額となり自社株式の相続税評価額が下がる

③ 家賃収入によって安定した収益を得られる。その資金を推定相続人の納税資金を形成することができる

④ 引退後の生活資金の為に、退任するときに現物支給の退職金

として投資不動産を取得することができる。(不相当に後学の場合は法人税の損金に算入できない部分が生じます)

またデメリットは主に次の3個になります。

① 投資物件の価格は高騰している為、いわゆる利回りは低下しているので、多額の資金流入は期待できない。(目的は自社の株価対策に限定して行う事に注力)

②  多額の借り入れを行って物件を取得する場合、本業の融資条件が厳しくなることがある。

③  物件によっては売却が難しく、すぐに資金化できないケースがある。

最後に留意点になります。(計8個)

① 貸家及び貸家建付地の評価は、課税期日(相続開始の日ないし贈与の日)において、現に貸し付けている部分に限られます。空室の部分は自己使用、自用地の評価となります。収益は少し落ちますが、相続、贈与の目的を達成するまでは一括借り上げをお勧めします。

② 借地権割合が高いほうが同じ価格でも評価減は高くなります。

③ 不動産投資より会社の純資産価格がマイナスになったとしても株価は0円が限度となり、マイナスにはなりません。他の財産の相続税評価額を減少させる効果はありません。

④  物件価格が高いほうがより多くの評価減の効果を得られますが、調達できる資金、意図する評価減の金額を考慮して投資を行ってください。

⑤  不動産投資も経営感覚が必要です。必要な修繕や設備の整備を適切に行って下さい。

⑥ 投資の目的が相続・贈与の為株価対策に限定してください。利益を追及して品質の低い物件を取得すると入居者が安定しなくなります。利益はそこそこでも質の高い物件を取得し安定経営を目指して下さい。

⑦ 贈与の直前または相続開始直前の取得や贈与直後または相続開始直後の売却をすると贈与税・相続税を逃れるための行為とされて通常の財産評価通達の適用ではなく、時価による評価で贈与税・相続税を課税される場合があります。

⑧ 相続・相続税対策を行う前に財産状況や相続税額の現状把握を行い、効果があるかどうか確認を実行して下さい。

以上が不動産投資を活用した事業承継になります。

事業承継対策は不動産投資以外にも保険を使うことやM&Aを使うなど様々あります。

向き不向きもありますので注意して行って下さい。

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